ニューヨーク市立大学で、SEAをテーマとしたポッドキャスト始まる
ニューヨーク市立大学(CUNY(キューニー))の大学院センターを拠点とするSPCUNY(Social Practice CUNY)は、芸術を社会正義とアクティビズムに結びつけることを目的に、2021年にメロン財団の助成を得て創設された、ソーシャリー・エンゲイジド・アートの理論と実践の場を提供する学際プログラムだ。クイーンズ・カレッジ美術学部の教授でアーティストでもあるグレゴリー・ショレットとクロエ・バスが共同ディレクターを務めている。
以前、このブログで、ショレット教授のゼミナールは、シラバスや参考資料がウェブサイトで公開されていて非常に勉強になることを紹介したが、この8月、SPCUNYネットワークのアーティスト、学者、コラボレーターたちの生の声を聞くポッドキャスト「Part of the Practice」がスタートした。CUNYの副ディレクー、キャサリン・ラソータがホストを務め、隔週水曜日に新しいエピソードが配信される。すでに、ショレットとバスが語るEP.01「What is Social Practice CUNY?」と、ミクストメディア・アーティストでハンター・カレッジの映画・メディア学科准教授のリカルド・ミランダ・ズニカを迎えたEP.02「Evolution of a Practice in the Public Sphere with Ricardo Miranda Zúñiga」がアップされている。対話を書き起こしたテキストも掲載されているのはとてもありがたい。「アートと社会正義の交差点」を謳うこのポッドキャストからSEAの背景や現状が語られることに期待したい。
2024.8.30(秋葉美知子)
女性アーティストのアーカイブAWAREのサイトに日本語ページが誕生
2014年にフランスで創設された非営利団体AWARE: Archives of Women Artists, Research & Exhibitionsのウェブサイトをご存じだろうか。名称どおり、女性アーティストの経歴紹介や関連記事を中心としたアーカイブで、1664年から1974年の間に生まれ、視覚芸術の分野で活躍した/している女性およびノンバイナリーのアーティストを、表現媒体や国の制限なく紹介している。その目的は、美術史のなかで長い間軽視されてきた女性アーティストたちを可視化することだという。
日本の女性作家についても、その経歴や研究記事が、日本語のテキストをフランス語や英語に翻訳したかたちで掲載されていたが、6月5日に、日本語セクション「AWARE-日本」が開設され、日本語でも読めるようになった。トップページの「最近公開された作家」というのは、最近アーカイブに加わり経歴が公開された作家という意味で、すでに収録されているアーティストは、ページ上部の「作家」ボタンをクリックすると、リストが表示される(現時点では20作家)。
世界の全ての収録作家リスト(フランス語と英語)は、AWARE本体のトップページ上部の「INDEX」ボタンから、作家名だけでなく、表現媒体、国、活動年代などでも検索できる。その情埋蔵量の多さと張り巡らされたリゾーム……入り込んだら出られなくなるようなサイトです。
2024.6.12(秋葉美知子)
アクティビスト・ミュージアム・アワード
博物館学の分野における最先端の研究で知られる英国レスター大学の博物館・美術館研究センターが、「Activist Museum Award」という賞を設けていることをご存じだろうか。この賞は、40年にわたってミュージアムの世界で研究、出版、コンサルティングなど幅広い活動を続けてきたロバート・R・ジェーンズとレスター大学の博物館学教授リチャード・サンデルが2019年に編集・出版した『Museum Activism』に提示した考えに基づいて活動するミュージアムやミュージアムとともに活動する個人またはグループに贈られる。この本に提示された考え方とは、当サイトの「参考文献」でも紹介しているように、“ミュージアムの中立性”はもはや神話であり、不平等、不正義、地球環境の危機が深刻化するこの時代に、ミュージアムは現実世界のさまざまな課題に深く関わり「文化変革のための能動的エージェント」へ変身すべきだという、いわば「ソーシャリー・エンゲイジド・ミュージアム」の提唱である。
3月4日に2024年の受賞者が発表され、以下の2ミュージアムと1つのコレクティブが選ばれた。
Museum X(英国・ロンドン):ロンドンに拠点を置くミュージアム X は、人、場所、物語を集めてアイデアを試し、まったく新しい方法でアフリカとカリブ海の遺産を再考する実験的な博物館。
Salt Museum(ギリシア・メソロンギ):ギリシアの塩の名産地であるメソロンギにあるソールト・ミュージアムは、教育と啓発を通じて持続可能な塩の採取を促進するために活動している。
Lusophone Museum of Sexual Diversity(国際的コレクティブ):ルソフォン・ミュージアム・オブ・セクシュアル・ダイバーシティは、ポルトガル語を公用語とするアフリカ、アメリカ、アジア、ヨーロッパの 10 ヵ国・地域にわたる LGBTQ+ コミュニティの歴史を復元し、現在を再確認し、未来をデザインするために活動している。
各受賞者への賞金は1,000ポンド(約19万円)と少額だが、それぞれのミッションや活動が注目を集め、潜在的な協力者やコミュニティに波及することが期待されるアワードである。
2024.3.25(秋葉美知子)
エコポエトリーに特化したサイトEcopoetikon
昨年アート&ソサイエティ研究センターは、「気候アクションSUMIDA―川辺から、詩と映像によるメッセージ」と題するプロジェクトを主催し、ますます深刻になる気候変動の問題にクリエイティブなアプローチで取り組んだ。そのドキュメントは、特設サイトで紹介しているので、ぜひご覧いただきたいが、このプロジェクトのコアとして、気候変動、地球環境、川や水をテーマとする詩を公募したところ、幅広い地域・年齢層から多様な視点、多様な語り口で書かれた作品が寄せられ、「詩」という表現形式の豊かな可能性をあらためて感じることとなった。
そんな中で、Ecopoetikonというエコポエトリーに特化したウェブサイトが、2023年9月に開設されたことを知った。英国で最もサスティナブルな大学と評価されているグロスターシャー大学を拠点とするチームによるプロジェクトだという。ここでのエコポエトリーは、絡み合う社会的危機と生態学的危機は同じ根を持っているという認識から、「エコロジーと社会を意識して書かれた詩」と定義され、その重要な役割は「エコロジー問題に対する意識を高め、自然界の美しさを明らかにし、生命の神聖さを称え、人間を超えた世界についての人々の認識を変える」ことだと述べている。
そして、地球に影響を及ぼす問題の多くは、本質的にグローバルなものであることから、グローバル・サウス、グローバル・ノース双方の詩人が平等に自らの表現を発表する場を目指しているという。
世界地図からエコ詩人を検索したり、テーマ(Oceans、Nature-connection、Pollution-waste、Un-natural-weather-disaster、Rivers-wetlands、Trees-forestsなど)からエコポエムを検索して読むことができることに加え、サブスクライブ登録をすれば、学校などで利用できる教育素材をダウンロードすることもできる。
2024.2.29(秋葉美知子)
パブリック・アート専門誌から形を変えたデジタル・マガジンFORWARD
非営利のアート組織FORECASTは、米国ミネソタ州セントポールを拠点に、公共の場で活動するアーティストを支援している。創立は1978年で、1989年から全米唯一のパブリック・アート専門誌『Public ArtReview 』を出版していた。この雑誌は私たちも長く購読していたが、2020年に廃刊となり、その後パブリック・アートにとどまらず、より広いSEAに関わるテーマを特集するデジタル・マガジンFORWARDに形を変えて、無料公開されている。
最新の第6号は「気候」がテーマだ。気候変動に取り組むことは、環境問題にとどまらず、社会正義と人権の問題に取り組むことでもあり、それを知らしめるためにも、アーティストたちの役割が重要性を持つことをさまざまな事例を紹介しながら論じている。ケーススタディのページでは、「大気汚染」「猛暑」「洪水」「気候変動による住民の強制移住」の4つの問題について、アーティストたちが科学者、大学、政策立案者、コミュニティなどと共同で行った11のプロジェクトが豊富な写真とともに紹介されている。
その中で驚いたのは、米国のFEMA(フィーマ)にアートプログラムがあるということ! FEMAとは、洪水、ハリケーン、地震、原子力災害を含む大規模災害に際して、連邦機関、州政府、その他の地元機関の業務を調整する「アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁」のことで、日本でも激甚災害が起きるたびに、類似した専門組織を創設すべきだという声が上がる。しかし、体制が整備されるとしても、その組織は、「アートを活用してエモーショナルに洪水のリスクを人々に伝え、災害の低減につなげよう」などという発想を持てるだろうか。
2024.2.16(秋葉美知子)
「詩」の力で、気候危機に向き合う意識を高め、アクションにつなげよう
アート&ソサイエティ研究センターでは「気候アクションSUMIDA~川辺から詩と映像のメッセージ」と題して、ますます深刻になっている気候変動をテーマに、官・民・学のコラボレーションでSEAプロジェクト展開している。
川に囲まれた東京都墨田区に拠点を設け、アート、サイエンス、建築、デザイン、ランドスケープ、まちづくりなど、分野横断で、気候アクションにつなげようという試みである。
そのコアとなる企画として、気候変動がもたらす危機を知り、川や水、地球環境について思いや考えを表現する詩(クライメート・ポエトリー)を広く一般公募している。
2014年の国連気候変動サミットで、マーシャル諸島の気候変動活動家で詩人でもあるキャシー・ジェトニル=キジナーさんが、生まれたばかりの自分の娘に宛てた詩を披露して絶賛され、詩は演説にも増して人の心に訴える力を持つことが示された。
気候変動、気候危機をテーマとした詩は海外にはどれほどあるだろうかとネット検索してみた。するとこのテーマについて書かれた詩を特集するサイトがいくつも見つかった。アメリカ詩人アカデミーのサイトpoets.orgには、「Poems about Climate Change」というページが設けられ、気候変動や関連するトピックについての詩が50編以上紹介されている(作者の解説付きの詩もある)。気になるタイトルの詩をChatGTPで和訳してみると、象徴的で難解な表現でも、書き手の世界観を共有することができる。
気候変動がもたらす危機は、将来の世代の子どもたちに重大な影響を与え、さらに低・中所得国の子どもたちがより大きな損失・損害を被ることが明らかになっている。子どもの支援を行う国際NGOセーブ・ザ・チルドレンが気候研究者の国際チームと共同で発表した、報告書『気候危機の中に生まれて』には、ザンビアの15歳の少女、ジャスティーナさんの詩が掲載されている。その中に、誰も否定できない、心に刺さる一節があった。
「私たち人間が問題を引き起こしたのであれば、同時に問題の解決者にもなれる。」
2023.5.30(秋葉美知子)
博物館法の改正で、日本の博物館は変わる?
関心のある人は少ないかもしれないが、博物館の設置や運営について規定している「博物館法」が約70年ぶりに改正され、4月1日に施行された。改正のポイントとして、自治体や財団法人等に限定されていた設置者要件を撤廃して、株式会社や学校法人、社会福祉法人などの施設も登録できるようになった(これまでは博物館相当施設、博物館類似施設という位置づけ)、法律の目的に「文化芸術基本法」の精神に基づくことが追加された(えっ、今ごろ?と思うが、これまで博物館は社会教育法のための施設だった)、博物館の事業に博物館資料のデジタル・アーカイブ化を追加、などがあげられているが、SEAにとって見逃せないのは、他の博物館との連携、地域の多様な主体との連携・協力による文化観光など地域の活力の向上への寄与が努力義務化されたことだ。博物館(歴史資料館、美術館、科学館、動物園、植物園、水族館などさまざまな形態がある)を観光振興に活用しようという意図が見える。しかし、これからの博物館に求められる役割は、観光資源となるだけではないことはもちろんだ。
世界のミュージアム・コミュニティでは、“ミュージアムの中立性”はもはや神話であり、不平等、不正義、地球環境の危機が深刻化するこの時代に、ミュージアムは、現実世界のさまざまな課題に深く関わり、社会的、政治的、文化的変革のための能動的エージェントへ変身すべきだという考え方が浸透してきている(『Museum Activism』より)。そして、その動きを促進、支援する仕組みも存在する。
英国のミュージアムと関係者の会員組織Museums Associationのウェブサイトを見るとそれがよくわかる。“Inspiring museums to change lives”をミッションとするこの組織は、いわゆる業界団体を超えて、ミュージアムが発信する価値観にもこだわり、英国のミュージアム全体に関わる課題をキャンペーンテーマとして、その課題に取り組む施設を支援する理論や資料、事例などを豊富に紹介している。現在9つのキャンペーン(アドボカシー、アンチ・レイシズム、収集品、ミュージアムの脱植民地化、エシックス、学習とエンゲイジメント、ミュージアムは人生を変える、気候正義のためのミュージアム、[ミュージアムの]労働力)が展開されているが、中でも気候危機、脱植民地化、アンチ・レイシズムが最近の中心テーマになっている。
たとえば「気候正義のためのミュージアム」のページには、ミュージアムにおける気候アクション(来場者の認識を高めるのにとどまらず、変化を支持したり、自ら変化することを含む)に役立つツールや知識、読むべき本のリストなどを集めたライブラリー“Climate resources bank”があり、ここはミュージアム関係者でなくとも有益な資料が満載だ。
Museums Associationのサイトには、ソーシャリー・エンゲイジドという言葉があちこちに出てくる。このことは、日本のミュージアムも当然意識しているだろうが、それを積極的に支援する体制になっているだろうか? 日本における同種の組織、日本博物館協会にはそういった活動は見られない。文化庁のInnovate MUSEUM事業の「地域課題対応支援」枠は、「これからの博物館に新たに求められる社会や地域における様々な課題(地域のまちづくりや産業活性化、社会包摂、人口減少・過疎化・高齢化、地球温暖化やSDGsなど)に対して、先進的な取組による解決を図る」博物館を支援する補助金で、ソーシャリー・エンゲイジド・ミュージアムの推進が狙いのように見える。しかし、英国のように具体的なテーマに即して積極的にリソース提供して行動を促すのではなく、あくまで待ちの姿勢。事業の立て付け自体にイノベーティブな発想がより必要ではないだろうか。
2023.4.3(秋葉美知子)
多様性と包摂をテーマとした野外展覧会が検閲を受け、開催を中止に
ダイバーシティ、エクィティ&インクルージョン(多様性、平等、包摂:略称DEI)の考え方は、米国では主流になっているだろうと思いがちだが、保守派の強い地方では決してそうではない。
「プロジェクト紹介」のページで紹介した、フロリダ州サラソタを拠点に活動しているNPOエンブレイシング・アワ・ディファレンスは、毎年開催している野外展覧会を、今年度はベイフロント公園での展示終了後、2会場に巡回展示する予定だった。ところが、2023年4月26日から開催を予定していたフロリダ州立カレッジ・マナティ・サラソタ校(SCF)から、3点の作品を展示から外すよう求められた。その背景には、来年の大統領選挙に共和党から出馬が予想される反リベラルの保守派で中絶には反対の立場をとる、ロン・デサンティス、フロリダ州知事が、公立の大学にDEIと批判的人種理論に関するプログラムを設置させないという計画を発表したことがあった。
問題になった作品は、ボクシンググローブをはめた黒人少年を中央に、公民権運動の指導者ジョン・ルイス、BLM(Black Lives Matter)の文字などを配したコラージュ《Good Trouble》(Clifford McDonald作)、妊娠中の女性が男性グループに「私たちは自分の体について声を上げられないの? 」と尋ねる様子を描いた《Body & Voice》(Diego Dillon作)。そして、世界各地の仮面を大木の下に配した《Being Different Gives the World Color》(神戸在住のアーティスト、Taira Akiko Hiraguri作)は、この作品に添えられたメッセージに“Diversity and inclusion”という言葉が含まれている。
この明らかに政治的な検閲に際して、EODの理事会は、大学側の要求は組織のミッションに反するとして、全員一致でSCFでの展覧会をキャンセル。代替の開催地を検討しているという。
2023.3.9(秋葉美知子)
ニューヨーク市政府の「パブリック・アーティスト・イン・レジデンス(PAIR)」
ニューヨーク市の文化局(DCLA)が主導するパブリック・アーティスト・イン・レジデンス(PAIR)は、課題を抱える市政府の部局にアーティストを組み入れて、創造的な解決策の提案・実現につなげようというプログラムだ。日本でも、アーティスト・イン・レジデンス(AIR)の施設や事業は増えており、情報サイトAIR_J(エアージェイ)のレジデンス一覧には88件がリストアップされ、自治体が芸術振興や地域づくりのために支援している事例も少なくない。しかし、市役所の期間業務職員のようなかたちでアーティストを起用するニューヨーク型のプログラムは今のところないと思われる。
PAIRは、トム・フィンケルパール氏が文化局長官だった2015年に創設された。そのルーツは、フェミニスト・アーティストのミエル・ラダマン・ユーケレスが日常的なメンテナンス労働をアートへと転換したパフォーマンスをきっかけに、1977年、ニューヨーク市衛生局(DSNY)が彼女を(無給の)アーティスト・イン・レジデンスに任命したことに遡る。その経緯については、『ア・ブレイド・オブ・グラス』第2号の「 パートナーとしての市:行政機関とコラボレートする3人のアーティスト」を参照されたい。
DCLAのウェブサイトには、PAIRの概要が次のように記されている。
PAIRは、アーティストが創造的な問題解決者であることを前提としています。アーティストは、コミュニティの絆を築き、双方向の対話の回路を開くために、オープンエンドなプロセスで協働し、その活動を体験する人々に新しい可能性が生まれるよう、現実を再想像することによって、長期的かつ持続的なインパクトを与えることができるのです。
DCLAとパートナーを組む市の部局は、一連の対話を通じて、その部局が重点的に取り組みたい対象者、課題、目標などを決めていきます。DCLAは、長官レベルの支援を得て、アーティストを公募、あるいは、芸術的な卓越性とレジデンスで扱う特定の社会問題に対する知識を有することに基づいて、アーティストを推薦します。最終的なアーティストの選定は、両部局が連携して行います。
それぞれのPAIRは、最短1年間です。レジデンスはリサーチ段階から始まります。その期間、アーティストは部局でスタッフと会い、業務や構想について学び、また一方で自らの芸術の実践とプロセスをスタッフに紹介します。こうしてアーティストは、部局とのパートナーシップで実施する1つ以上の公開参加型プロジェクト提案。こうしてリサーチ段階は終了し、実施に移ります。アーティストには報酬が支払われるほか、部局内のデスクスペースやDCLAのMaterials for the Arts(*)の利用なども可能です。
現在、PAIRの原点となったDSNYでは、プリントメイキング、インスタレーション、パフォーマンスなどを手がけるアーティスト、ストゥ・レン(sTo Len)がレジデントとして活動している。彼は、巨大な要塞のような衛生局中央修理工場の中にある、かつて同局の注意喚起やルール周知の看板やポスターがスクリーン印刷されていたスタジオを拠点に、Office of In Visibility (OOIV)プロジェクトを立ち上げた。このスタジオに眠っていた機材や資料を再利用、アーカイブしながら、DSNYのビジュアル表現の歴史と積極的にコラボレーションし、独自の新しいシリーズを創作している。実は、彼は2021-22年のレジデント・アーティストとして指名されたのだが、自らの希望で期間延長し、アーカイブをさらに充実させて、DSNYの歴史と進化を市民に伝えようとしている。レンのこれまでの活動は、Hyperallergicの記事に詳しい。
ちなみに、2022-23年の期間、PAIRを受け入れている部局は、
Department of Design and Construction(設計・施工局)
Department of Homeless Services(ホームレス対策局)
NYC Health + Hospitals(NYCヘルス+ホスピタル)
Office for the Prevention of Hate Crime(ヘイトクライム防止対策室)
いずれの部局も緊急の課題がありそうなので、アーティストたちがどのようなアイディアで取り組むのか、注目したい。
(*)企業や個人から寄付を受けた、再利用可能な素材(紙、布、ペンキ、文具、工具、家具など)を、芸術プログラムを行うNPO、ニューヨーク市の公立学校、市の部局に無料で提供するリユースセンター。
2023.2.23(秋葉美知子)
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